2003年(平成15年)赤星先生は、2ミリ以下の創口から超音波乳化吸引を行うために必要な、特殊なnano sleeveを開発しました。世界の極小切開白内障手術の幕開けでした。
創口が小さくなると、手術には極めて高度な技量が必要となり、超音波乳化吸引装置から超音波チップ、手術用のメスやプレチョッパーに至るまで、すべての器械や手術器具を新たに作り替える必要がありました。
また直径6ミリある眼内レンズを、この創口から移植するためには、特殊なインジェクター(挿入器具)と、新しい挿入方法の確立も必要でした。
海外メーカーとの共同開発により2004年にはこの手術に必要な様々な器具が実用化され、この年から1.8ミリの切開創からの極小切開手術が、三井記念病院における白内障手術の標準術式となりました。
以来三井記念病院では30,000件以上の白内障手術が、この極小切開によって行われていますが、たった1.8ミリの創口から手術を行い、6ミリの眼内レンズを移植するなどということは、世界中の誰も信じませんでした。
これを証明するために、赤星先生は海外64カ国へ講演や公開手術に出向き、この新たな術式の普及に努めましたが、現在でも海外の数々の国際学会からの招聘を受けています。
手術の難易度が極めて高いため、日本国内で2ミリ以下の切開創から手術を行っている施設は殆どなく、唯一三井記念病院と当院でのみ可能な白内障手術です。
創口が小さく、手術時間が短いことのメリットは、術後の炎症が少なく、傷の治りが早いこと。
術後乱視を生ずることなく、早期の視力回復が可能で、感染症などの合併症のリスクが極めて低いことなどがあげられます。
今まで極小切開白内障手術で、術後に感染症を起こした例は一例もありません。